序章

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「チッ……俺の水泳を邪魔するな」 「な、なにぃぃ! なんだ、その態度はぁぁ!」  プールから上がってきた牧島君は、煙たそうに河谷先生を見つめると、憎々しげに舌打ちをする。 「ん、お前は……山崎サキか?」 「な、なに!? なにか用事?」  ドンッと川谷先生を押し退けながら、牧島君が私の目の前に――近くで見ると細身ながらも筋肉質のたくましい身体だ。それに目つきは悪いけど、整った顔立ちだ。 「俺の顔を覚えているか? それのお前は〝何人目〟だ?」 「は、はぁ? イタタタァ! アンタがなにを言っているのか、さっぱりだよぅ!」  俺の顔を覚えているかだって!? そう言いながら牧島君は、右手の人差し指と親指で私の左頬を抓(つね)る……な、なにをするんだぁー!
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