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―――気がつくと、男は山の入り口に立っていた。
日がちょうど出てきたところだった。
「……年が…明けたんだな……。それにしても………今までのは一体……」
振り返っても朝日に染まる山が堂々と佇んでいるだけである。
男はゆっくりと、歩き出した。
本当に村に帰ってきたのかを確認するように。
ちょうど村人たちも活動を始めたらしく、明かりがあちこちで灯り始めた。
「本当に…帰って来たんだ……」
変わらない光景にとてつもない安堵を覚えた。
…ゆっくり歩きすぎて日も昇ってしまった。
家が見えてきた頃、向かいからやってきた男に、呼び止められた。
「……おい!」
「…?」
「今まで妹さん放っぽってどこ行ってたんだよ!!心配したんだからな!!」
「すまない…」
「まぁ、戻ってきたし、構わないさ。それよりも…良かったな!!」
「…え?」
「お前んとこの妹さん、すっかり元気になったんだな!」
「………!ほ、本当か!?」
「ああ。戻ってみりゃわかるさ」
さよならも言わずに走り出した。
家が近づいてくると、家の前に人だかりが出来ていることに気がついた。
「元気になったんだな!」
「はい!ありがとうございます!」
「おねーちゃんこれちょーだーい」
「はい、どうぞ」
妹の声だ。
人だかりの中に飛び込んで、掻き分けて行こうとすると、
「おい!!戻ってきたぞー!」
一斉に皆の目が男に集まった。
しん…と静まり返った次の瞬間、
「今までこんな可愛い妹ほっぽってどこいってやがったんだよー!」
「お帰りなさい!!」
口々にそんなことを言われた。
「…あ、ありが…とう…」
皆の優しさに感動した。
すると突然少女がばっと振り向いた。
「その声…お兄ちゃん…?」
皆が道を少し空けてくれた。
皆にありがとう、といいながら妹の元へ歩いて行くと…
妹が男に抱きついた。
「お兄ちゃん、お帰りなさい!!心配したんだよ!!」
妹が涙をためて兄を見上げる。
「ああ…ごめんな…。ただいま」
男も少女を抱きしめ返した。
すると「兄妹の再会だー!!」と歓声が巻き起こった……』
ということじゃな」
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