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正月の準備にとみんなが山菜を買いにくる大つごもりの日が一番の稼ぎ時だった男にとっては、一刻も早く村に帰らなければならない。
「助けていただきありがとうございました。僕は用事があるのでこれで…」
「これこれ、待ちなさい。そなたは今起き上がれるだけで、立ち上がったり歩いたり出来る状態ではない!」
「そうです。このまま歩けばまた傷が開いてしまいます!」
女の子が涙を浮かべてこっちを見ている。
お爺さんと男の子の剣幕と女の子の涙に圧倒された男は、しぶしぶ諦める。
「わかりました…お店…どうしようかなぁ…」
「ふむ。そなたは店をやっておるのか」
「…はい。僕はこの山の麓の村に住んでいます。ここで山菜を採って、村の人たちに売っているのです」
「そうか…ならば正月にと山菜を買いに来るこのつごもりの日が稼ぎ時、と言うわけじゃな。」
「そしたらあたしたちが行くよ!ね、兄ちゃん」
「うん。神主様、僕達が行ってまいります」
「うむ。任せたぞ」
「おじちゃんは寝てなきゃだめだよっ」
べーっ、と女の子が舌を出して、走っていった。
「まだおじちゃんじゃないけどね…。あの子たちだけで、大丈夫なのですか?」
「二人なら心配いらんよ。ああ見えて二人ともしっかりしておる。大丈夫じゃ」
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