1人が本棚に入れています
本棚に追加
「育てるって……」
呆れた様子のミストが、溜め息をつく。
「文句は言わせぬ、これは決定事項だ、部下達にも言っておけ」
矢継ぎ早に言葉を紡ぎ、反論を防ぐ。
「さって……、では、私は部屋に戻る」
マントを翻し魔王城の奥へ歩を進める魔王。
「……」
少女もとてとて、とその後を追う。
「……魔王様」
いままで黙っていた魔王軍軍団長、『クローディアス』が口を開いた。
「……」
魔王は立ち止まり、顔だけを横に向けた。
「………"鬼"の力は未知数。貴女に刃を向けないとは限りません」
「……ククッ」
魔王は、笑った。
「そのような事でビクビクしていたら、魔王は務まらんよ」
「……そうですか」
短く呟くと、一瞬で煙のように消えた。
恐らく空間移動の呪文だろう。
「では、戻る」
再び歩を進め、魔王と少女は城の奥に消えていった。
「……何を考えているんだ、あのお方は」
呆れ果てたような声でサーザルが言う。
「ま、何考えてんのか分かんないのはいつもの事でしょ……」
ルチアも項垂れる。
「大体、刀に興味があったというなら何故人間を……」
「分からないが、何か魔王様にも考えがあるんじゃないか?」
「だといいがな……」
最初のコメントを投稿しよう!