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「"鬼"とは、人間でも魔物でも無い、別の生物だ。」
「人間を凌駕する程の知能、魔物とは比べ物にならない力……。人間からしても、我等からしても、……"化物"だ。」
「化……物……」
その単語を聞いて、少女は顔を伏せた。
「あぁぁ、待て待て!違う違う、お前はただ"鬼"の血を引いているってだけだ!お前は化物じゃない!」
「……そっか」
いくらか、少女は顔を明るくした。
「昔は、人間と魔物と鬼は、対立関係だった。先代魔王が、その身を犠牲にして、鬼を絶滅させた……はずなんだが、血は残ったようだな」
「……」
「……何故、私を助けた?」
一呼吸おいて、魔王は少女に問いかけた。
「え……?」
「先程礼を言ったが……理由を聞いておきたくてな」
「黒球を斬らなかったら、お主を拐った張本人である私に、少なくとも軽傷を負わせられた……なのに、何故?」
今一度、魔王は問いかける。
その瞳は、魔物を束ねる魔の王とは思えぬ澄んだ色で―――
「……分からないよ」
「分からない?」
少女の答えに、魔王は疑問の色を顔に浮かべる。
「分からない……体が勝手に……」
「そうか……」
「(どうやら……鬼の力を完全には操れてはいないらしいな……)」
魔王は一人、思考する。
「ん、そうだ少女よ」
幼き鬼に、ある質問をする魔王。
「…なに?」
「いつまでも少女少女と呼ぶのは煩わしい。そなたの名前を教えておくれ」
「名前…?」
「うむ。良いだろう?」
「…フルーラ・フロイライン。」
「フルーラ……か。良い名だ」
そう言って、魔王は僅かに微笑んだ。
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