*4 理由

2/7
前へ
/20ページ
次へ
「"鬼"とは、人間でも魔物でも無い、別の生物だ。」 「人間を凌駕する程の知能、魔物とは比べ物にならない力……。人間からしても、我等からしても、……"化物"だ。」 「化……物……」 その単語を聞いて、少女は顔を伏せた。 「あぁぁ、待て待て!違う違う、お前はただ"鬼"の血を引いているってだけだ!お前は化物じゃない!」 「……そっか」 いくらか、少女は顔を明るくした。 「昔は、人間と魔物と鬼は、対立関係だった。先代魔王が、その身を犠牲にして、鬼を絶滅させた……はずなんだが、血は残ったようだな」 「……」 「……何故、私を助けた?」 一呼吸おいて、魔王は少女に問いかけた。 「え……?」 「先程礼を言ったが……理由を聞いておきたくてな」 「黒球を斬らなかったら、お主を拐った張本人である私に、少なくとも軽傷を負わせられた……なのに、何故?」 今一度、魔王は問いかける。 その瞳は、魔物を束ねる魔の王とは思えぬ澄んだ色で――― 「……分からないよ」 「分からない?」 少女の答えに、魔王は疑問の色を顔に浮かべる。 「分からない……体が勝手に……」 「そうか……」 「(どうやら……鬼の力を完全には操れてはいないらしいな……)」 魔王は一人、思考する。 「ん、そうだ少女よ」 幼き鬼に、ある質問をする魔王。 「…なに?」 「いつまでも少女少女と呼ぶのは煩わしい。そなたの名前を教えておくれ」 「名前…?」 「うむ。良いだろう?」 「…フルーラ・フロイライン。」 「フルーラ……か。良い名だ」 そう言って、魔王は僅かに微笑んだ。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加