*4 理由

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「あの刀も、鬼の刀だったのだな……どおりで抜けないわけよ……」 「…………なぁ、フルーラよ」 「……?」 首をかしげるフルーラ。魔王城に来てすぐよりかは、いくらか不安は安らいでいるようだ。 「帰りたいか?」 真っ直ぐフルーラの瞳を見つめて問いかける。 あの人間達の所に帰りたいか、と。 「………………」 長い沈黙。 魔王は、十中八九、フルーラは人間の所に帰るだろうと思っていた。 だが――― 「……いや」 「なに……?」 答えは、"帰りたくない"というものだった。 「……」 自分が"鬼"ということを、ここに来て知った。 勿論、それもあるが――― フルーラには、別の理由もあった。 「……わたしは、みっつの時、両親が死にました。」 「……」 「それで、従兄弟の家に預けられて……」 徐々に、フルーラの声が小さくなる。 目には、涙がたまっている 「そこで……ううっ」 「……良い、少しこちらに来い……」 涙を流すフルーラに、優しく声をかける。 ふらふらと、玉座に座る魔王の懐に倒れこむフルーラ。 「うっ……えぐっ……」 「……」 フルーラの頭を、その綺麗な手で撫でる。 撫でながら、魔王はその手に魔力を集中させた。 「(……ふむ)」 フルーラの記憶を読み取っているのだ。 そこに映った、記憶とは。
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