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「んー……」
フルーラは目を覚ます。
魔王の体の上で。
「(あ……そっか、私、寝て……)」
ぐきゅるるるるる~
フルーラの中の腹の虫が盛大な鳴き声をあげる。
「う~」
フルーラは顔が真っ赤だ。
お腹に手を当てて、必死に鳴き声を抑えようと試みる。
が、
ぐぎゅゅるるるる~
止まない。
「(駄目だ、意地張って何にも食べ物食べなかったけど……もう駄目だ)」
フルーラはふらふらと歩き出し、食材を求めてさ迷った。
「おい、あれ……」ヒソヒソ
「魔王様が拐ったっていう人間か……?」ヒソヒソ
道中首が無い剣士と槍を持った半魚人のような魔物がフルーラを発見したが、フルーラの目には最早映っていなかった。
「(おなか……すいた……)」
ふと、目の前にある扉から、匂い。
甘い、香り。
「(……)」
ガチャ
フルーラは扉を開けた。
そこには、鍋や食器が並んでいた。
人―――もとい魔物は一匹もいない。
一つだけ、火にかけられた鍋があった。
フルーラは近付く。
甘い香りは、鍋に近付く程強くなっていて。
フルーラは、もう食べ物の事しか頭に無かった。
躊躇無く、フルーラは鍋の蓋を開ける。
シチュー。
そこには、何の変鉄も無い正真正銘のシチューがあった。
だが、フルーラの目にはご馳走にしか見えなかったのだろう、先程から涎がダラダラとこぼれている。
「ごはんんんんんんん!」
正直、意地を張って魔王から出されるご飯を拒否していた頃は、とても辛かったのだろう。
その辛さが、今ここで弾ける―――
驚くべき速度で食器棚から皿とスプーンを拝借し、皿にシチューを盛り付けるフルーラ。
一体どこにそんな体力があったというのだろうか……。
「いっただきまぁぁぁあす!」
満面の笑みで手を合わせるフルーラ。
食材をスプーンですくい、口に入れる―――
瞬間、フルーラは魔王の間にいた。
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