*4 理由

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ガチン! と、歯がぶつかる音が虚しく響く。 「……う?」 夢から覚めたかのように辺りを見回すフルーラ。 「や、フルーラ。すまない、余りうろつくと危険なのでな……」 フラッ、と。 不意に、フルーラが立ち上がる。 おぼつかない足取りで、フラフラと揺れている。 「お、おい!フルーラ!どうした!?」 魔王の言葉など耳に届いていないかのように、ゆっくりと歩むフルーラ。 グンッ! フルーラが一気に踏み出し、魔王に殴りかかった。 「な……!?」 咄嗟に避ける魔王。 ボコンッ! 先程まで座っていた玉座の、丁度顔の位置に、ぽっかり穴が空いていた。 「……ッ」 魔王は咄嗟にフルーラの懐に潜り込み――― 「すまない!フルーラ!」 鳩尾に拳を入れた。 「キャウッ……」 と、小さな声を出して、フルーラは倒れた。 「一体どうしたんだ……」 倒れたフルーラを抱え込む魔王。 「まさか鬼の力が暴s……」 ぐきゅるるるるる 「」 魔王は言葉が出なかった。色んな意味で。 「……おなかぁ…………すい……たぁ」 気絶しながら空腹を訴える器用なフルーラを見て、魔王は少しだけ笑みをこぼした。
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