*1 キリス町襲撃

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「……ふむ」 魔王と知って尚挑んでくるこの度胸。 そして何よりもあの刀。 「よし、ガーゴイル」 「ハッ!」 魔王に呼ばれ、側で見ていたガーゴイルがそそくさと膝まづく。 「この娘、持ってかえろう」 「「……は?」」 少女とガーゴイルが同時にすっとんきょうな声を上げた。 「だから、この少女、持ってかえるぞ」 「持ってかえると申しましても……」 「幹部共には私から言っておく」 言うが早いか魔王は横に手を伸ばし、サッと振った。 ピシッ!とまたもや空間に亀裂が走り、何もない真っ暗な空間が顔を覗かせた。 「私はこやつが気に入った」 と言うと魔王は少女を抱き抱えた。 「ひゃあっ!な、何を……」 「動くなよ。空間の狭間に落ちたら出られなくなるぞ」 魔王の言葉に少女は怯み、少し動きを抑えた。 「あっ!」 「どうした」 少女の視線の先には、逃げ遅れたのであろう成人の男女がいた。 だが 「おばさ……」 男女の二人組は、こちらを見るやいなや逃げ出した。 「あ……」 「……」 魔王は男女が逃げ出したのを見ると、ゆっくりと空間の歪みに足を踏み入れた。 「たす……け……」 少女は、泣いていた。 「……ガーゴイル、軍は引き上げだ。魔王城に戻るぞ。」 「ハッ!」 ガーゴイルは素早く飛び立った。 「……」 空間の歪みはゆっくりと閉じ、後には何も残らなかった。
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