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「何か魔術でもかかってるわけでもなく」
魔王は手の上でくるくると刀を回し、
「なのに、なぜ抜けない?」
独り言のように、問いかける。
「答えよ」
静かに、しかし確かに、有無を言わさぬ声色で魔王は少女に。
「……」
だが、少女は答えない。
「あの時、お主はこの刀を抜いた。」
「それも、何か特別な事をせずに、すらりと。」
あの時、とは、キリス町襲撃の際、少女と魔王が対峙した時だ。
「もしやお主は……」
ドン!
魔王が何かいいかけた刹那、爆音。
「何事だ!」
魔王が玉座から立ち上がり、叫ぶ。
すると、魔王の間の扉が開き、傷だらけのガーゴイルが入ってきた。
「ま、魔王様!襲撃です!」
「……チッ」
魔王は小さく舌打ちをすると、少女の方に駆け寄り、
「お主は玉座の裏で大人しくしておれ。なに、すぐ終わる」
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