何気ない日常の中で。

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雨埜さんとは幼稚園からの幼なじみだ。 彼は、人付き合いがあまり得意ではない俺の、友達第一号だった。 あんなに嫌で、嫌で仕方がなかった幼稚園に行くのが何時しか一番の楽しみになっていたのは、きっと雨埜さんのおかげだろう。 なんて、絶対言ってあげないけど。 それに、今思うと、俺の世界の中心は何時も雨埜さんだった。 そんな彼を意識しはじめたのは何時からだろう? 小学校? 中学校? ううん。きっと出会ったときから、俺は貴方(あんた)に惹かれてたんだろうな。 明るい、まるで太陽みたいな、俺とは全く正反対な君の傍に居たい。 と、初めて強く思ったんだ。 この気持ちに気づいてしまったときには、『男を好きになってしまうなんて。』 と、一時期、雨埜さんを避けていた時期もあった。 でも、体は正直なもので、たった2日、3日会わないだけで俺の心が悲鳴をあげた。 そんな自分に『ああ、本当に俺は雨埜さんのことが好きなんだな。』 ということを思い知らされた。 もちろん、忘れようと無理矢理、彼女を作っていたこともあった。 そんな関係が長続きするはずもなく、どれも長続きはしなかった。 まあ、その時の彼女は今ではよき相談相手になってくれている。 同性に恋している自分は軽蔑、侮蔑の目で見られているのだろう。 そう思っていた。 でも、彼女は録に彼氏らしいこともしてあげられなかった俺を、軽蔑することなく、ましてや応援してくれる。とまで言ってくれたのだ。 俺は、思わず泣いていた。ずっと誰にも打ち明けることができず、そんな自分が惨めに思えて仕方がなかった。 そんな気持ちから解放された気がして、気づけば泣いていた。 それからは、何とか自分の中で気持ちの整理ができ、今日まで雨埜さんを思いつづけることができた。
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