何気ない日常の中で。

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とか、今までの雨埜さんとの思い出を現実逃避のように思い出していても、現実が変わるわけもなく、気付けば俺の目からは、透明な何かが落ちはじめた。 そんな俺を見て、始めは気恥ずかしそうな顔をしていた雨埜さんは、パッと傷付いたような、悲しそうな表情で 『…っ、そ、そうだよね。男に告られても、嬉しいわけないよね。…ごめん。この事は忘れてくれるかな?……お、俺も、この事は忘れるから…。秋が、い、嫌なら、…俺、幼なじみも辞めるし、……。』 こう、言ったんだ。 その瞬間、体の血が全て沸き上がったかのような、そんな感覚に襲われた。 『おいっ、何勝手に親友辞めるとか言ってんだよ。俺は、俺は、おまえの親友という立場にすら、いちゃいけないのか?少なくとも俺はそれで満足してた。してたつもりだった。ずっと、ずっと好きだった。独り占めにしたかったし、俺だけのものにしたかった。でも、俺とお前は男同士だ。自分の持っている感情が異質なことくらい直ぐに分かったよ。時が過ぎたら忘れるかな?そう、思ってた。でも、だめだった。時が過ぎれば過ぎるほど、どんどんお前を好きになってる自分がいて…怖かった。この気持ちが知られて、雨埜さんに避けられたら、そう思うと夜も眠れなかった。それに、周りの奴らはどんどん好きな奴が出来はじめて、俺は異常、異質、なんだなって…、改めて思い知らされた。そのうち、お前にも好きな奴が出来て、お前は本当に嬉しそうな顔してたよ。そんなお前を見て俺がどんな思いでいたか、分かるか?分かんねーよな~。……悔しかったし、悲しかった。惨めで苦しくて、お前はもう必要無い。そう言われてるような気がして。』 感情が高まり、抑制が効かない。 そんな俺の口は止まることなく言葉を紡ぎつづける。 『雨埜さん。俺はな、雨埜さんには真っ当な人生を歩んでほしいんだ。俺なんかを好きになって貴方(あんた)の人生を狂わせたくはないんだよ。貴方(あんた)とは、ずっと腐れ縁の幼なじみ、っていう関係でいたい。……親友でいたいんだ。いさせてくれ。頼むから。』 自分の言っていることが支離滅裂過ぎて、自嘲の笑みが漏れる。 すると突然、話しているうちに大号泣してしまって、鮮明ではない視界一杯に何故かさっきの傷付いたような顔からは一転し、ほうけたような顔をしながらも、にやにやしている雨埜さんのドアップがあった。
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