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雨埜さんに抱きしめられている。
そう認識した途端、顔に血液が急激に集まっていくのがよく分かった。
そのせいで今、自分の顔は真っ赤なのだろう、ということもだ。
『えっ、ちょっ、ちょっと、雨埜さん?ちょっ、まっ、待って。何して、』
『…っ、どうしよう。秋、今俺、人生最大に嬉しいかも。秋が俺のこと泣くぐらい好きだったなんて…、気付かなかったよ~』
そう言った雨埜さんに抗議しようとして俺は、はっとした。
俺、なんて事口走って…。
何も言い返す言葉が見つからず、押し黙ってしまう。
そんな俺に気づいているのかいないのか、まあ、後者だろう。
雨埜さんは
『大丈夫。俺、秋が自信を持って好きって言えるような男になるから。秋のためなら俺、どんなことでも出来ると思うんだ。だから、秋が不安にならないように、何時でも、何時まででも、秋が俺のことを好きな限り、包み込んであげたい。秋の唯一無二の存在になれるよう、頑張るっ!』
俺に力強くそう宣言して、青々とした夏の訪れを感じさせる、新緑の通学路を元気に駆けて行った。
―――――――
ずっと言えなかったこの思い。
拒絶されるのが、ただただ、怖かったから。
でも、貴方(あんた)の言葉を聞いて俺もやっと、やっと一歩踏み出せそうです。
明日、明日彼に会ったら、長年胸の内で燻っていたこの思いを告げよう。
雨埜さん。あなたには、『ごめんなさい』よりも、『ありがとう。愛してる』この言葉を。
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