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「最終選抜には戻ってくる。あれにも大事な国試だ、心配であろうが堪えてくれ、言える事はそれだけだ」
肩を叩き諭す。
この男は先代皇帝、髭を蓄えた男は先々代皇帝。
そう言われてしまえば従わない訳にはいかない。
「わか・・・りました」
肩を落として来た道を戻る。後宮を抜け、自室のある緑陽殿(リヨウデン)へと向かった。
部屋に入ると椅子に腰掛け、ため息を漏らす。
(姫・・・、今どこに・・・)
幼き頃より片時も離れた事がなかった。
ましてや自分に黙って行くなんてあり得ない事・・・。
心配で胸が潰れそうだった。
珠来では直系の皇族に子供が産まれると年の近い遠縁に当たる子供を世話係りとして着ける習慣があり、秋羅も遠縁ではあるが皇族である。
いつかは世話係りを離れる時が来るがそれまでは片時も離れずに見守っているものであった。
今すぐに姫のもとへ駆け付けたい衝動を抑え、気が乗らずに億劫そうに椅子から立ち上がり、自身の与えられた仕事へと行く。
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