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「姫様~~、お待ちください~!!」
宮廷を出発してから早1週間が経とうとしていた。
最初の数日は街並みがあったがすでに街並みは消え、草原が広がっていた。
早足の『姫』を追い掛けるのは荷物を積んだ馬を引く弥生(ヤヨイ)。
声をかけると姫は立ち止まり振り返った。
「早くー!!今日中には砂峯(サホウ)の町に着きたいんだ、もう野宿は嫌でしょー!!」
右の前髪が右目を覆うように長く、後ろ髪は頭の上で一つに結ばれているがそれでも腰より下にあるほど長い髪をしている。
『姫』とは愛称で本名は花林(カリン)と言う。
やっとの事で弥生が追い付くとボソッと言った。
「それから、私の事は姫でも花林でもなく『林』と呼んで、身分がばれたら大変よ!」
「すみません」と肩をすくめる。
皇族が産まれ、名前を着けるとその名前はそれ以降、何人たりとも着ける事が出来ない。 『花林』と言う名前も花林より若い年の同じ名前は存在しない。
なので年と名前で身分がわかってしまう。
珠来が創立されてから三人目の女帝、自由奔放な皇帝である。
大抵、皇族がお忍びで旅行などする場合は偽名を使うのが通例となる。
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