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しばらく歩くと草原を抜けて砂峯に入る関所が見えて来た。
辺りはすでに薄暗く、旅人も足速に関所の門へと吸い込まれて行く。
砂峯は海岸の街で大半が砂地である。
対岸からあらゆる物資が到着する港街、各地から商人が集まる為、それを狙った盗賊も頻発する。
花林は布を巻き付けておいた刀の布を取り腰に差し、門へと歩き始めた。
その時、後ろから声がした。
「ねぇ、姉ちゃん達」
振り返るとフードをスッポリ被った背の低い人が立っていた。
「砂峯にいくんだろ?俺も中に入りたいんだ」
被っていたフードを外すと年は10歳程の男の子だった。
鼻の上に刀傷がある。
不審に見ると
「別に怪しくないよ、親戚の家の帰りなんだ」
話を聞くと行きにかなり怪しまれ、関所を通るのに時間がかかったと、それで一緒に通ってほしいと言う事だった。
「怪しいに決まってるじゃない。小さい子供が一人旅だなんて・・・。」
「だよなぁ、親父が向こう側に迎えに来てくれるんだけど・・・。頼むよ、謝礼もするしさ!」
両手を合わせて必死に頼み込む。
「しょうがないわね。でも、旅札を見せてちょうだいそれから名前は???」
やれやれと弥生に視線を送ると困った顔で頷いた。
笑顔の男の子はガサゴソと首から下げた旅札を差し出した。
「俺は莠稀(ユウキ)よろしくな!」
「私は林、こっちは弥生」
旅札を確認すると怪しい所は見つからず、すっと渡す。
思わぬ道連れが出来たが、予定通りにその日の内に砂峯へ入る事が出来た。
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