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関所を通り過ぎ、砂峯に入る。
大通りの両側にはいろいろな店が立ち並び、食べ物の匂いや活気のある人達の声がする。
「さ、今日の宿を決めましょう。予算は?」
隣を歩く莠稀に目線を送ると大きな眼が驚いたように花林を見た。
「おいらも一緒でいいの?夜中に荷物が無くなるかもしれないぜ?」
「伊達に女二人で旅してないわよ。乗り掛かった船よ、向こうまで付き合うわよ」
クスッと笑う。
暫く歩くと大きく開かれた宿屋の看板に目が止まった。
普通であれば店先で呼び込みの店員が居るはずだが、その店の前には旅人以外の人は見掛けられなかった。
入り口に少し入り、様子を伺う。
呼び込みがない割には客席は満席に近い程の賑わいをしている。
「いらっしゃい、三人かい?」
こちらに気付いた年配の女性が声を掛けてきた。
白髪混じりで背は低いが小肥り、近寄ってくる。
「泊まりたいんだけど、部屋はあるかしら?」
「う~ん、二人部屋なら空いてるんだけど、大丈夫かね?」
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