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ドアを開け目に入ったのは 知らない女と… 健の姿だった…。 ドアを開ける音で気付いた2人は 私の方を見て、はっとした顔で静かに見ていた。 なんか…マヌケ。 裸の2人も、私も… 消え去りたい気持ちが 一気に出てきた。 我に返り、私は走って部屋を出た。 それからの記憶はなく 気付いたら自分の部屋にいた。 暗い部屋でただただ 黙って座り、泣いた。 嗚咽をするわけでもなく 泣き叫ぶわけでもなく 静かに泣いていた。 どれくらいの時間 そうしていたのかもわからない。 ふと携帯を見ると夜中だった。 ピカピカ光る着信を 知らせるランプ。 ―着信30件― 全て健からだった。 手の中でまた震える携帯。 電話をとらずただ見つめる。 留守番に切り替わり 何かを録音していた。 積み上げた何かが いとも簡単に崩れた気がした。 音もたてず、簡単に。
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