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『つ、よし…』 冷や汗が出る。 足が震える。 見たくなかった。 見れば泣いてしまうから。 許して…しまうから… 『美樹…。ほんとにごめん… 謝っても、謝りきれない… 言い訳するつもりもない。 俺は最低だ… でも…離れたくないんだ… 自分勝手だってわかってる! もう二度としない… 憎んでもいい。 恨んでもいい。 ただ…隣にいてほしい…』 勝手だ。 勝手すぎる。 それでも嫌いになれない 自分が嫌… でも… 『もう、やめて…帰って…』 聞きとるないぐらいの 小さい声で言い 私はまた歩みだす。 『美樹!』 『い…やだ!』 掴まれた腕を振りほどく 『触らないで……触らないで! あの女の人に触れた手で 触らないで…もう…嫌なの… 常に頭の中にあるの!あの光景が! 私にしたようにキスをして 私にしたように触れて… 汚い……汚い! もう帰って!帰ってよぉ!』 『…』 気付けば雨が降っていて 私も健も冷たくなっていく 『風邪…ひくね…ほんとにごめん… 俺がしたことは許されることじゃない。 恨んで、憎んで。憎むことで美樹の頭の中に俺がいれるならどんなに憎まれてもいい。ごめん…帰るよ…。でも、これだけは忘れないでほしいんだ。俺は美樹が好きだ。それだけは、忘れないで…』 それじゃ。と言って 車に乗り込みエンジンをかける。 私は音だけを聞き 健が行くまで立ち尽くした。
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