パンケーキ

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「誰ですか?ここは厨房ですよ。」 ふと我に返った絵都子は目の前に泡立て機を軽快にさばく一人のギャルソンが立っていた。 明らかにこちらは見てはいなかったが、間違いなく不法侵入した絵都子に気がついていた。 「感心しませんね。お出迎えしなかった私も非がありますが、尚悪い。」 黙々と作業をしながらそのギャルソンは眉間に皺を寄せながらボソボソと言った。 「すっすみません!」 背負ったリュックが前に飛んでいくほどの勢いで深々と頭を下げた。 「バニラエッセンス」 「えっ!?」 「そこにあるので取ってください。」 ギャルソンは手を止め、絵都子の左手付近に置いてある小さな黒い瓶を指差した。 「はっ、はいっ!!」 慌てて両手で取り、ギャルソンの前につきだした。
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