4/5
前へ
/56ページ
次へ
「そういえば、帰りに魔法で悪い奴を云々って言ってたな」 「ああ、待ち合わせ時間がちょっと早かったからな。部活を早退した」 「待ち合わせって、あいつらと?」 「そうだ」 ほう。あの黒タイツどもは友佳と待ち合わせしてたのか。敵があばれているのに偶然出くわすとか、そんなファンタジーなことはないんだな。現実の魔法少女は。いやー、やっぱり現実ってそんなもんだね。ヒロインと敵役が待ち合わせしなきゃ出会えない時代なんだな。ちょっと悲しいわ。 「敵役もいろいろ苦労してるんだな」 俺はしみじみとそう言った。 「そうだな。愚痴を聞く身にもなってくれと言いたい」 「分かるぜその気気持ち」 いや、分からんけど。 「分からんくせに」 友佳に心を見透かされた。 「まあ、分からんな。敵の愚痴を聞くヒーローの気持ちは」 「ままならないな、この世は」 遠くを見る目で友佳が言った。 「テストの点とかな」 「それはおまえが悪い」 即答だった。確かに俺が悪い。 夕闇が闇に変わっている。 電柱についている貧弱な蛍光灯の明かりの下、友佳が立ち止った。 「じゃあ、またね」 「ん、ああ」 俺は軽く手を振った。そのまま進みかけて、立ち止まる。遠ざかっていく友佳の後姿をぼーっと見送る。たっぷり十分ほど、友佳の姿が角を曲がって見えなくなるまでそのまま立ち尽くした。 腹が減った。俺もたませんを買えばよかったかもしれない。早く家に帰って夕飯を食おう。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加