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無言で家に入り、靴を脱ぐ。 だれもいないリビングに入り、かばんを無造作に放り投げ、コンビニの袋をテーブルの上に、これまた無造作に置く。制服の上着を椅子の背もたれにかけて、リビングを出る。洗面所で手を洗って、トイレに行く。 そしてリビングに戻り、コンビニの袋からペットボトルの緑茶と弁当を取り出す。弁当は健康的かつ満腹できることをうたった宣伝文が貼られたものだが、俺は何となく安くて量が多そうだったから買った。それを電子レンジに突っ込みあたためオートボタンを押す。ぴろりろ♪ などという珍妙な電子音が鳴り、コックが踊るアニメーションが液晶を飾った。テレビをつける。椅子に腰かける。息を長く吐く。 「なんか疲れたな」 いつも起きないようなことが起きたからだろう。友佳と一緒に帰るなんて久しぶりだ。それに、二人でどこかへ遊びに行く約束もしてしまった。 「何だろう。ハズいな……」 俺は頭を抱えた。 そこで気付いた。 俺、肝心なこと突っ込んでない。 「友佳がなんで魔法少女やってるんだって突っ込むの忘れた……」 俺の失策だな。ボケとツッコミをあえて曖昧にすることで笑いを取りに行ったのが間違いだったのか。ああ、やり直したい。最初のチョイスを間違えたんだ。もっと王道的に、ちゃんと突っ込めばよかったんだ。下手な策を弄するからこうなる。大コケだ。 俺は背を椅子に預け、天井を見上げた。 「突っ込めよ、『おまえが悩むべきはそこじゃないだろ』ってな」 ぴろぴっろろぴっろっろー♪ 軽快な音楽が、電子レンジの作業が終わったことを主張した。
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