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五時間目、数学。
そして、木曜日は教員会議のため六時間目がない。
俺は部室へ向かう。
第二美術部。俺の所属する部活は、そう名乗っていた。
部長、大崎あかり。部員、俺。所属者二名の超弱小部である。
まあ、書類上二人とも普通に美術部員である。また、活動場所も普通の美術部と同じ美術室で、つまり第二美術部など存在しないのだ。
部長がいうところの第一美術部の面々が、ウォーミングアップとして石膏像デッサンを始めている。そんな彼女らをしり目に、俺たち第二美術部は美術室の片隅でだべっていた。
「ふへー。チョコレートが食べたいねえ」
机に突っ伏した部長が言う。黒髪というには明るすぎる色の髪が、彼女の顔を隠していた。
「いや、俺はいらんです」
俺はそう答え、部長のまねをして机に突っ伏してみた。
「さっそうとチョコを差し出うのあおとこらろ」
部長が何事かをつぶやくが、後半であくびをしたためなにを言ったのかわからない。
「あのさ、部長」
俺は上体を起こして言った。
「なに」
部長も顔を上げて言った。
「俺、昨日戦闘少女に会いました」
「ほう」
部長はふんふんと軽くうなずいた。
「全身黒タイツの戦闘員とナイフで戦ってました。チープな特撮みたいな感じで」
「そりゃあいい。その映像観たい」
「俺、録画してないすよ」
「カメラマンいなかったの。どうせ映研かどっかの撮影でしょ」
「いや、いなかったですね」
「じゃあマジもんの戦闘少女だね」
「そうなりますね」
部長はまた机に突っ伏した。
俺も机に頭を預ける。
「すごいね」
部長が言う。
「確かにそうですね」
俺は答える。
「マジもんだったら、君はもっと驚くとおもうのだけど」
正論だな。でも、だってその戦闘少女が友佳なんだもん。
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