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俺も立ち止まって、その店を見る。
「マジかよ……」
一言で言うならゴミ屋敷。二言でいうなら、廃電化製品の山。英語で言うとジャンクマウンテン。どうやら店の前に空き地、いや駐車場かも、があり、そこにがらくたがうずたかく積まれているようだ。おかげで店本体が見えない。こんな場所があったことを今まで知らなかったのは、もしかしたら超科学や何かで隠蔽されていたのかもしれない。このあたりにはあまり来ないからかもしれないが。
友佳はがらくたの山を迂回し、わずかに残されたスペースを通って店先にたどり着く。看板には、「神崎ラヂオ商会」とある。店というより民家に近い構造で、普通に玄関があった。友佳はインターフォンを押すと、
「西野です」
と言った。
「はい。友佳さまですね」
スピーカー越しに、無機質な女性の声がする。
「そちらの方は?」
俺のことか? どこかにカメラがあるんだろうな。
「後で話す」
「部外者を立ち入らせるわけにはいきません」
がごん、と音がして、背後にあるがらくたの山が動き出す。中から巨大な機械の腕が飛び出して、俺の頭に迫る!
「うおおおい!」
俺はよけようとして、盛大にこけた。痛い。
空振りしたその腕は大きく上に振りかぶると、倒れている俺めがけてこぶしを突き立ててきた。
「死ぬ! 俺死ぬ!」
とっさに立ち上がり、友佳に抱きつきかける。ああ、なんて情けない行動をとってるんだ俺。俺は行動をキャンセルして逃げ出そうとしたが、もう遅い。短い人生だった。恐怖で体が動かない。
バギャン!
友佳がナイフでこぶしを受け止めていた。あれだけの質量を生身の女の子が受け止められるはずが無いので、ナイフに細工があるか、腕が自ら動きを止めたかのどちらかだろう。もしかしたら友佳が本当に戦闘ヒロインに変身しているのかもしれん。見た目は変わらんが。
友佳がナイフを機械のこぶしから抜き、切りつける。激しく火花が散り、機械の腕は力なく友佳の数センチ脇の地面へ倒れた。
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