0人が本棚に入れています
本棚に追加
友佳がナイフを投げ、インターフォンに刺す。ガン、と音がして火花が散る。友佳怖え。俺は恐怖を上塗りされ、動けない時間が延長された。
「斉藤のことは後で話すから、とりあえず玄関開けて」
「かしこまりました」
割れた音でそう答えがあった。
はたして、玄関は開いた。ぼろい引き戸に見えるが、どうやら実際は違うようだ。ガチャガチャと数種類の錠が解除される音がしたし、自動で開いた。
「斉藤」
友佳に声をかけられた。
「なんだ?」
呆然としながら答える。
「お弁当」
「ん?」
見ると、地面に落ちたコンビニ袋から、無残にも踏みつぶされた弁当が見え隠れしている。踏んだの、絶対俺だよな。だが原因は博士にあるはずだ。
「とりあえず、博士に弁当代を請求しよう」
脱力して、俺は動けるようになった。
ナイフを構えたときに友佳が落としたお茶を回収し、友佳に渡す。友佳はふたを開けてごくごくと半分くらい一気に飲んだ。
「あー、びっくりした」
友佳が言った。
「その割には平然と動いてたような」
俺が言うと、
「場馴れだね」
と言った。そうか、一応戦闘ヒロインを一ヶ月やってるんだもんな。
「まったくピスティルも融通が利かなくて困る」
「ピスティル?」
「さっきの声の子」
ああ、あの読み上げソフトみたいな声の。
最初のコメントを投稿しよう!