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中に入る。個人商店にふさわしく広い土間があって棚がたくさん並んでいる。棚になにか入っていて蜘蛛の巣が張って無ければちゃんとした店に見えるんだが、あいにくここはちゃんとした店じゃないようだ。
「どうぞおあがりください」
店の奥から声がする。抑揚の無い女性の声。ピスティルという人だろう。
友佳に続いて、奥に向かう。
そこに、メイドさんがいた。
「おかえりなさいませご主人様!?」
おどろいた俺が叫ぶ!
機械な(奇怪な、との掛け言葉だ)ゴーグルをかけたメイドさんは無言で手を後ろに回すと、黒光りする拳銃を取り出した。迷いなく俺に銃口を向ける。
「やめて」
友佳がメイドさんの右手首をつかみ、下に降ろさせた。
「はい」
メイドさんは素直に言う事を聞いた。
「立ち入り許可します」
よかった。
店の最奥部の壁の、一段高いところにドアがあった。メイドさんはそれを開け放つ。真っ白な廊下が続いていた。病院のような、生活感のまったくない廊下。
「どうぞ」
メイドさんが友佳を中に通す。俺も続いて入ろうとしたら、
「あなたは身分が確定していませんので」
とか何とか言いながら、メイドさんが俺に手錠をかけた。流れるような動きでアイマスクもされる。
「おい! なんだこりゃ!」
俺は抗議するが、聞き入れてもらえない。手錠が引っ張られる。歩けってことだろうか。
「まあ、後で博士に話すから、それまではそうするしかないんじゃないか」
と友佳が言う。
目隠しのまま引っ張られて歩くって怖いぞ。
俺はひどい扱いにびくびくしながら歩く。
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