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「香、ちょっと言い過ぎじゃないか?」
香の持った雑誌を取り、再びゲームの記事を見る。
「ええと、ふぁんたすてっく……ふぁん……」
見兼ねた香が再び雑誌を取り上げ、表題をスラスラと読み上げた。
「『ファンタステイック・ファンタジー』。よくあるファンタジーものだけど、テレビのコマーシャルもよく見るし、話題作みたい。欲しがるな、って言っても無理な話よね……」
そう言って、香は困った表情を浮かべた。
「それなら、買ってあげれば良いじゃないか。クリスマスも近いことだし、勉強も怠けてるわけじゃないんだろ?」
「それはそうだけど……急にヘンじゃない? おねだりなんて柄じゃないのに、何か強要されてる様な……」
香には学の言動が気になっていた。「みんな持ってるから」というのはありきたりな理由だが、それを気に掛けるということは、もしかしていじめか、仲間外れにされているのではないか……。
「考えすぎじゃよ」
「えっ?」
「子供というのは、ワシらが考えているよりもずっと、純粋で真っすぐな存在じゃよ。勘ぐっても何かが分かるわけじゃない」
「お父さん……」
「平たく言えば、子供はアホという事じゃ」
それを聞いた香は、深刻な表情から一変して、苦笑いを浮かべた。
「一応私の可愛い息子なんだけど……そんなストレートに言わないでよ」
「なぁに、そんなに心配ならワシが聞いてくるよ。年頃の子供にゃ口うるさい母親より、無害な爺さんの方が話易いじゃろ?」
「それもそうね……じゃあお願いしていい?」
「おう。任された」
そう言うと私は、杖をついて階段を昇りはじめた。
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