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食事を終え外に出た私達は、半ば悪あがきでゲームも扱う古本屋等もあたってみたが、新品はおろか中古も見つけられる事もなく、失意のまま自宅に向かって歩いていた。
「学、今は売り切れだけど、来週になればまた入荷するさ。ずっと買えないなんて事は絶対にない」
「その時は、友達はもっと先に進んでるよ……」
ゲームというものも、食事と同じく早い内に堪能するのが良いらしい。更に学のように社交を重んじる人間にとって、流行に乗り遅れることは致命的なのだろう。
残念ながらもう手立ては無い。私はどうにか精一杯の笑顔を作り、学に話し掛けた。
「……よし! じゃあ、他のゲームを買ってやろう! 新作は『ふぁんふぁん』だけじゃ……」
喋り途中で、隣に学がいないことに気付く。振り返ると、学は横道を見ていた。私は慌てて駆け寄る。
「学?」
「通ったことのある道なんだけど……気付かなかった」
学の指差す方向、細い路地の先を見ると、そこには「テレビゲーム専門店」という看板が添えられた、古くて小さな店があった。
しかし、昔あった駄菓子屋の様に、まるで古家の一部を店舗に改修したと思われる外観は、自分が言うのも何だが、明らかに時代から取り残されたものだった。
「いやいやいや。幾ら何でも、あの店にはないだろう。そもそも営業してるか分からないし、危ない店かもしれん」
「でも明かりがついてるし、きっとまだやってるよ!」
言うよりも早く、学は駆け出した。私も仕方なく後を追う。
(しかし……)
記憶力は良いほうではないが、まだこの歳でボケてないのが私の自慢だ。この辺は散歩で通る道だが、明らかにそこの路地、そして奥の店は、見覚えのない空間であった。
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