価値のない日々

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胸の下あたりまである黒い髪を揺らしながら、少女は無表情で階段を上る。 周りにはザッ ザッという少女が雪を踏む音しかしない。 『ハァ…』 階段を上りきった少女は、誰も居ない神社に足を向ける。 吐いた溜め息は白く変わった。 少女は神社の賽銭箱にお金を入れ、静かに手を合わせた。 毎朝4:00に起きて、この神社で無心でお参りする。 この習慣は、少女―琴音にとって重要な事であった。 “ここに居れば楽になれる気がする” と思い続けているからだ。 琴音の顔を見ると、整った顔に絆創膏が貼ってあるのが分かる。 琴音の顔には、無数の傷痕がある。 顔以外の身体の方が酷いが、厚着した服で隠れているため見つかることは無い。 (そろそろ帰ろうかな…。) 琴音は登ってきた階段の方へ歩みを進め始めた時 「ねぇ、」 後ろで声がした気がしたので、琴音は足を止めた。 (私を呼んでいるの?) そう思ったが、神社には人っ子一人居なかったのを思い出し、また歩き出そうとした―― 「ねぇ!琴音ちゃん。」 自分の名前を言われて、すぐに後ろを振り返る。 「やっとこっち向いてくれたね~」 神社の賽銭箱の側に、一人の少年が立っていた。
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