価値のない日々

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『あなた誰?』 琴音は相変わらず無表情で聞いた。 「“セイ”って言うの!」 琴音とは反対に、明るい声と笑顔で少年―セイは言った。 少年が唯一暗い部分を持つと言ったら、烏の濡れ羽色をした髪だろうか。 彼の髪は周りの白に酷く浮いていた。 『あっそ。何の用?』 「冷たいな~、酷いよ」 言葉とは裏腹に、笑顔で返すセイ。 琴音とセイ。 二人とも琴音は整った、セイは可愛い顔立ちでお似合いだが、回りの空気の差が激しい。 (この子のせいで2分遅れてる…) 琴音は、 一日のスケジュールが分単位で決まっている。 まるで操り人形みたいに。 その時間に遅れそうで、琴音は早くセイとの会話を終わらせたかった。 「ねぇ、琴音ちゃん。」 『何?早く言って。』 「今の生活から逃げたい?」
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