此の門を潜る者、戻る事望むなかれ

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 明るくて積極的な女の子。  絶が羽深にもった印象は、一貫してそれだった。  最初に皆が静まっている中陽気に、でも意志をもってこたえる明るさや積極性。  それに、今だって男が悪人かもしれないことなど気にせずに話しかけている。  だからこそ、男には羽深がここにいる理由を理解できなかった。 「さっきも言ったように、皆なにかしらの理由をもってここにいるからね。事前に俺が調べられないようにか、名前すら一切聞かされてないんだよ。名前だけでも詳しく知れると考えたんだろう。その辺りは国も徹底してるんだよ。」 「でも、それっておかしくない? だって、問題を知っていたほうが、逆に問題を無くしてあげることもやり易いとおもうんだけどなぁ。」  勿論、それが目的ならその通りかもしれない。  つまるところ、それが目的ではないと言うのが実状だが、そんなことをうっかり洩らして不安を煽るほど、絶は馬鹿ではなかった。 「知られてると、それこそ知られてる人となんか全く関わりたくなくなる。そんな人に考慮してるんだと、俺は思うよ。」
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