此の門を潜る者、戻る事望むなかれ

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 そう呟いたとき、羽深の顔が少し俯いたのを、絶は逃さなかった。  この話題で影をさしたのだから、こんな明るい子の中にもやはりなんらかの影が、知られたくないことがあるのだろう。 「ま、羽深の言う通りではあるけど、今更知ることも調べることもできやしないし、何より政府の深い思惑なんか俺のはかり知れるとこでもないしな。だからあまり深く考えても仕方がないと思う。」 「……まぁ、そうだよね。私元々考えて動くタイプでもないし、気にしたって仕方ないか!」  そう言うと、さっきの顔はどこへやら、名一杯明るい声で 「じゃあさじゃあさ、この話はやめて、今から先生を質問攻めにしちゃいます!」 「お手柔らかにな……」  これからのことを思ってか、絶は嬉しそうにしながらため息をついた。
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