最後のサンドイッチ

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ある日のこと。 川口さんの身体を拭きながら、好きな食べ物の話をしていた。 今まで食べ物の話なんてしたことがなかったが「サンドイッチが一番好きなんだなぁ」と。少年のような笑顔で教えてくれた。 しばらくその話で盛り上がり、身体を拭き終わった頃に、川口さんが「あぁ、最近サンドイッチ食べてないなぁ…サンドイッチ買ってきてもらえないか?」と突然私に頼んできた。 私は、最近川口さんが流動食みたいなものを数口しか口にしていないこともしっており、一度は躊躇した。しかし、川口さんのさっきの笑顔がもう一度見たくて、私は実習担当看護師に頼み込んだ。 看護師は、川口さんの状況から考えて、絶対に食べられないから買ってきても…と言われたが、しぶしぶ許可してくれた。 私は許可されると、一階の売店に走った。1分、1秒でも早く、川口さんにサンドイッチを届けたかったからだ。 ミックスサンドを買い、部屋に戻ると、川口さんが待ち構えていた。 普段あまり動かさない手を精一杯使って、震える手で買ってきたサンドイッチを一気に食べた。 サンドイッチを一口食べた時なな川口さんは、「あぁ、どれくらいぶりかなぁ…」といいながら、とても美味しそうに、一気に食べた。 「川口さん、こんなに食べれるんだからまだまだがんばれますね」と、私が言うと「まだ頑張れるかなぁ…あぁ、とても美味しかった…」と言って小さな子どものように眠りに就いた。
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