自分の分身

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唐突に尋ねるけれど、 子供の頃って、自身の心の中に分身がいなかった? 姿やカタチは違っても、 中身はもう一人の自分。 外見は例えば、 自分の想像上の生き物で、他人の目には見えなくて、 もちろん 自分の一番の理解者、 分身なのだから当たり前だけど。 決して裏切ることはしない。 淋しいときに現れて、 必要なくなればスッと消えていなくなる。 人間とは実に都合のいい生き物だ。 …実際のところ、私もそういった人間のうちの一人なのだけれど。 あれはいくつのときだったかなぁ… 牡丹が幼稚園に入園してしばらくたった頃だったかな。 あの子との出会いは家の近所の公園だった。 牡丹はそのときひとりだった。 いや、いつもひとりで遊んでいたんだけれど。 その公園には何組かの母子連れがいて、子供達は友達同士で戯れ、ママ達は子供達を横目に世間話に花を咲かせている。 牡丹には友達がいなかった。 他人と話すことをしなかった。 いつもみんなとは離れたところでぽつんとしていたけれど、心は淋しかったのかもしれない。 その日もひとり砂場で団子を作っていたか、 シーソーの片方側に座ってひとりぴょんぴょん跳ねていたか、 ジャングルジムに登って真ん中辺りでぼーっとしていたか、 滑り台を何度も何度も繰り返していたか、 ブランコに座って… そう! ブランコに座って、こぐでもなくただじぃーっと隣のもうひとつの空席を見つめていたんだっけ。 ここに誰かいてくれたらなぁ。 何でも話せて、私だけに語りかけて、微笑みかけてくれる人。いつもどこに行くにも一緒にいてくれる私だけの友達。 アハハ! そんな人いるわけないかぁ~ 牡丹が空を仰ぎながら視線を前に戻すと、 目の前に一組の母子が立っていた。
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