一章  七月一日

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 雪丸は一歩、瞬間的に青空に近づく。速い、ただその一言。フッと雪丸の右手が青空の顔面に近づく。その拳をまたしても動体視力の力で紙一重でかわす。だが、これで終わるのではなかった。雪丸は、かわされた右手をクイッとひねらせ、そのまま裏手で持った包丁で切りかかった。  「なっ――」  さすがにこれは青空もかわしきれず、顔面に軽く切り傷ができる。  「ちぃっ!リーチが読めねえ……」  いくら動体視力が良くても、見えない裏手からいきなりくる攻撃はかわせない……厄介だ。ただでさえさっきまでの攻撃をかわすのが精一杯だったというのに。  だが青空は顔色一つ変えない。そして何故だろう、彼の顔を見ていると安心するというか、負ける気がしないのはのは――  「おい青空!大丈夫か!お前結構ピンチなんじゃあ…」  「あん!?俺様がピンチだと?今のは初見だからビビっただけだ。まあ今から一瞬で片付けてやるよ。終わったらこの状況をちゃんと説明しろよ」  「ああ……」  そんなの僕だって聞きたい。星がなんらかの形で関わっていることは確かだが。  僕は隣にいる星を見てみた。それに気付いた星が僕の方を向き、軽く頷く。何の頷きだろうか。もしかして、僕のさっきの考えを【読んだ】のだろうか。そう考えれば、この戦いが終わったら星はこの状況を説明するということになる。やはり関わっていた。敵か味方かいや、信じるか信じないか。敵でも【シナリオ】を教えてくれることもあるからだ。
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