一章  七月一日

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 問題はその言葉を信じても良いかどうかだ。その言葉、情報が本当に合っているのか。ここがRPGとの違い。人間は嘘をつく。僕みたいに。    「【解体】(バラ切り)ぃぃぃぃぃ!!!」  そんな僕の考えを遮るかのように雪丸が攻撃を繰り出す。今度はいつもと何かが違う。殺気というかなんというか。裏手の回転技。おそらくあいつはこれで決める気だ。  「はっ!いいねそういう真っ向勝負!受けてたつぜ!」  青空が笑う。そしてそれと同時に雪丸の技に右の拳を突っ込む。  「ば、馬鹿野郎!そんなことしたら……」  当然、肩と腕がお別れをすることになる。  「うへへへ!!右腕頂きぃぃ!!!!」  「あっそ。だが……てめぇの顔面は俺様がもらったああああ!!!」  一瞬。青空は右腕を引っ込めた。  「なっ……!!」  気付いた時にはもう遅い。雪丸の両手は空を切る。思い切り振り、しかも空中。当然ながら今の彼の体は、というか顔面は幼児でもたやすく触れられるほど【ガラ空き】な状態だ。  「おらよおお!!」  青空は雪丸の顔面を【左手】でぶん殴った。  「ふべゃあああー!」  変な声をあげて雪丸は空中を鮮やかに舞い、きれいに背中から大きな音をたて着地した。というかぶっ飛ばされた。雪丸は軽く意識を失っているようだ。   「やった…のか…。ってか左手!?お前さっきまで顔面殴る時は毎回右手だったはず……」  「あん?俺様はそんなこと一言も言ってないぜ。お前が勝手に思ってただけだろ。あの不審者コックもな。ちなみに俺様は左利きだ」    「な、なるほど……」
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