一章  七月一日

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 「はあ……。私ってそんなに信用できない?これでも私、結構夜空君のこと助けたつもりなんだけどなー」  「………」  当然、さっきの考えも【読まれている】ことは分かっていた。だが、本当に無条件でできるのか。それはつまり、無条件で【読めてしまう】ということだ。  相手の考えがは分かる?それは確かに便利かもしれない。でも、それは逆に【分かりたくないことも分かってしまう】ということなのではないだろうか。  誰にだって【裏】はある。それをいつも【読んでいる】否、【読まされている】彼女の【思想】はやはり【能力】なんかではなく、【呪い】なのではないか。  彼女の気持ちなんて僕が分かるはずない。でも、なんとなく僕と同じなのかと思うと心が揺らぐ。  今の僕の考えを【読んでいた】であろう彼女が、どう思ってるかなんて僕には知るよしもない。  七月一日。窓の外に見える葉は緑で、僅かな風で揺らぐ。自然さえも、僕の【疑い】を揶揄するのか。  やれやれ。一つ、彼女の話を信じてみることにするか。さっきのことだって。同情ではなく、自分の意思で。これが正解かどうかなんて分からない。でも、たまには、たまには思いきって決断することも大事だと思う。じゃ、いっちょ始めますか。  この先がどうなろうとも、僕はやってみせる。 以上終了。
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