一章  七月一日

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   星 灯のカオスな自己紹介がようやく終わった。爆弾発言をした後、「だいたい中学生は~」とかなんとかで十分以上しゃべりやがった。  「はい……。では、星さんはあそこの席に座ってください」  いつの間にか先生が敬語になっているが、そんなことはどうでもよい。  あそこの席、つまり僕の隣の席。最初は羨ましそうに僕のことを見ていた男子共も今は若干おびえていて、むしろ自分の隣ではなくて良かったみたいな顔をしている。それはそうだろう。美人は腹黒いとかいうのがあるが、あれは度がすぎている。  ってな訳で授業が始まった。普通に始まり、何事もなかったように授業は進み、そして終わる。それの繰り返し。考えてみればただ転校生が来たというだけなのだ。だけ、というのは少々可愛そうな気もするが、でも実際その程度の印象しか受けない。  仮にも僕の隣の席なのだ。しかし僕には彼女の人物像がはっきりと見えてこない。これは僕にとってはあまりない現象というか、感覚だった。強いて言えば懐かしい感じがする。まあそんなことはどうでもいいのだけれど。    下校時刻。あっという間だった。星 灯が先生に呼ばれる。学校内の説明がされるのだろう。僕は通学カバンに荷物を入れて下校準備を始めることにする。カバンに荷物を入れ終え、階段を下り、自分の靴と上履きを入れ替える。
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