一章 超常と温もり

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ドアを閉めたはずなのにはっきりと声が聞こえた。 気がつけばあの人物―老紳士のフェレスさん―が真横に立っていた。 「申し遅れました。私、巴大付属高校学生課局長にして[悪魔]のメフィスト=フェレスでございます。」 恭しく頭を下げるフェレスさん。 さらに悪魔ときた。 「巴大付属高校は様々な理由て家族を失い、1人になった様々な種族や立場の方々のための学校。新たな家族と共に学び、生きる学校なのです。」 そんな学校の説明はどうでもいい。 コイツは…いや、フェレスさんは家族と相談と言った。 つまり会える…? 母さんに?父さんに?妹に? 「おっと…説明は入学すると決めてからでも遅くはないですね。コレは1回のみの奇跡です。触れる事はできますが、ご家族は話す事が出来ません。ご了承を。」 それは悔しいが、また会える喜びの方が強かった。 「では…」 フェレスさんの指先がポウと輝き、しだいに大きくなっていく。 光が収まるとそこには数日会ってないだけなのに、とても懐かしい人達がいた。 俺の家族だ。 「父さん…母さん…千穂……。」 「期限は24時間きっかり。再度後日にお伺いします。では失礼。」 言葉と共にフェレスさんは消えていた。 悪魔なんて言っていたが俺にはそう思えない、優しい人だと思う。 目の前にいる母さんが俺を抱きしめた。 父さんも柄にもなく涙をこぼしている。 「父さん…母さん…」 俺は我慢できずに泣いてしまった。 お調子者でいつも笑顔の千穂も泣きながら俺に抱きついてきた。 「なんだよ…グスッ、中学生になるからもう泣かないって…言ってたろ?」 説得力のない言葉だと自分でも思う。 妹も身振りで説得力ないよと伝えてくる。 今は少しだけ、甘えていても時間はある。 だから今日だけは…この奇跡を味わっても良いよな。
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