第2章 馴染アンチ

45/45
1135人が本棚に入れています
本棚に追加
/240ページ
 この施設において、怪我はつきものだ。ヒーロースーツとヒーローに代えはきかないにも関わらず、重症なんてザラにある。備えようとしているのは、戦争なのだ。  あからさまに技術力が上な者に対して、二年足らずで準備しなくてはいけない以上、訓練に甘えは許されなくて当然だ。本来なら、座学などやっている暇は無い程に。  そんな状況下、重症人が出る度に時間を食っていては始まらない。その為この施設には、世界に復旧している現代科学では考えられない医療技術が存在し、物理的な怪我なら数日と掛からずに完治することが出来る。  勿論、筋力が若干衰える等の後遺症はあるが、訓練に支障を来さないようになっている。  流石に、死んでしまってはこの施設の医学でもどうしようも無いことだが、逆に死んでいなければ、大抵の外傷は難なく治る。一色が何もしなかったのはその為だ。  一色はエレンが刺された瞬間に医療班へと連絡しており、伊都が止血を初めてから三分後、医療班はエレンを運び出していくこととなる。  馴染はエレンがニヤリと笑った後エレンと伊都に背を向け、入り口前に溜まっている生徒達の方へと歩き出していた。  案の定入口を塞いでいた生徒達は道を開き、馴染は悠々と歩きながら、笑ってはいても不満を漏らすように、小さな声で呟いた。 「やれやれ、どうしてこの世には愛なんてものが溢れてるんだろう」
/240ページ

最初のコメントを投稿しよう!