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「しくしく・・・」
年は14~18程、
体は土や埃で汚れているものの、何処か品のある娘が泣いている。
「・・・どうしたんだい?
そんなに泣いて?」
お侍は心の中で、
何という器量良し!!
っという言葉を発しつつ娘に声を掛ける。
「お侍様・・・」
泣いている娘はお侍に顔を向ける。
「【コレ】はだめなの・・・」
(なんだありゃ・・・)
「活きがよくないから、
これじゃだめなの・・・!」
(魚がメッタ刺しじゃあないか・・・)
娘は声を張り上げた。
「もっと活きのいいやつが欲しい!!
欲しいんだよ、お侍様!!」
お侍は少し無言で考えた。
(・・・何を言っているんだ?
頭のおかしい女かもしれぬ・・・しかし・・・)
奇妙だとは思いつつも、
器量の良い娘だったこともあり、
下心の働いたお侍様はその娘に魚(さかな)を与えることにした。
「らっしゃいー、お一ついかがですか?」
魚屋は言う。
「活きのいいのを一つ」
「へぇ、これなんかどうでしょう?」
「では、それを貰おうか」
お侍は魚売りから活きのいい魚を買い、娘に渡す。
「さぁ、活きのいい魚だよ。
持っていくといい」
魚を娘に手渡し、ひと気のない草むらに手を引く。
「帰る前に少し・・・」
「・・・がう」
「お礼を頂戴したいのだが・・・」
「・・・ちがう」
お侍は娘を茂みに押し倒す。
だが、
娘の様子が先程とは変わっていた。
「・・・話が違う」
は?
とお侍は首を傾げる。
「私が欲しいのは死んだやつじゃない!!
活きがいいやつじゃないと嫌だと言ったでしょ!!!」
睨み付け、勝手を言う娘の発言に対し、多少怯えながらもカチンとくるお侍。
「なっ・・、活きのいい魚をわざわざ買ってやったじゃないかっ!!」
お侍はそう言い返すと娘はお侍の首を掴む。
「ねぇ・・・知ってる?
『魚』ってのはね・・・
死んじまうと「魚(さかな)」になっちまうけど・・・
生きている時は・・・・
「魚(ウオ)」っていうんだよ?
ねぇ・・・
魚住(ウオズミ)のお侍様・・・!!!」
・・・
その後、お侍様は見つかったかって?
否・・・
行方不明だそうだ。
村人達は噂する
「あのお侍様は、
神隠しに遭った」
のだと。。。
不思議なことに神隠しに遭う人は
「魚(ウオ)」に因んだ名前の人ばかりだったそうな。。。
以上。
「魚」のはなしでした。
まぁ、『どう読むか』は
貴方次第ですけどね・・・。
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