湧き出る酒

2/5
前へ
/33ページ
次へ
あるところに貧乏な村人がいました。 その村人はある日、 自分の家に帰る道の途中で 「徳利(とっくり)」 を拾った事が、 その後の人生を激変させてしまうのでした。 「う~、今日も寒い・・・。 そして懐も寒いわ・・・。」 そう言いつつ家の中に入り暖をとる女性。 「凍死が先か餓死が先かの勝負になってきたわね。」 と独り言をしつつ、 先程の道端に落ちていた徳利を取り出す。 「そういえば、なんとなく持って帰ってきたけど、なんであんなところに徳利が・・・?」 暫し考えるも徳利を見ていると、 落ちていた事について考えるよりも別の思想が浮かび上がる。 「・・・まずい、 お酒呑みたくなってきたわ。」 女性の家には最低限の生活をする分のお金しかなく、 お酒は滅多に買えるものではなかった。 「あーーもう! 変なもの拾っちゃったかもー!!」 女性は誘惑の根源になってしまうと、 拾った徳利を拾い目の届かぬ場所へ置こうとその場を立った。 「・・・これ売ったらお酒買えないかしら?」 と冗談半分で徳利を振ってみる。 ・・・ちゃぽん。 「ん?」 先程までは何も中に入っていなかった筈の徳利に透明の液体が満たされる。 「な、なんか湧いてきた。ほんとに変なもの拾っちゃったわね・・・」 等と思い、その透明の液体の匂いを嗅ぐ。 「あれ?もしかして、これ」 女性は徳利に口をつけ液体を呑む。 「酒!!! そして・・・ 結構いける!!!」 女性はお酒を一気飲みし、 空になった徳利をまた振ってみた。 「でたっ!!」 歓喜しお酒を呑み、 女性は満足のいくまで徳利を振りお酒を呑んだ。 ・・・その日の夜。 女性は友人達を自宅へ招き、 宴会を始めた。 「お酒は私のおごりよーー!! じゃんじゃん呑みねー!!」 お酒を注いだ杯を手に、 女性は叫ぶ。 「奢りって、タダだろ?これ!」 友人達には既に徳利のことを話した為、事情はすべて知っていた。 「ふふ、これからは毎晩宴会ね♪」 そんな発言を無視し、上機嫌な拾い主。 「とはいえ、お酒は準備できるけど・・・ 食べ物のほうは皆様おねがいします♪」 両手を合わせ、友人達にウィンクする。 「ったく、しょうがないわね♪」 との友人の一言が合図となり、 周りは声を上げて笑い、 楽しい宴会が始まるのであった。 しかし そんな中に一人、 意味深げに笑う友人が一人いる事に、 拾い主も周りの友人達も気付かないのであった・・・。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加