あの時の二人

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父は元々小さな会社を立ち上げていた。 それをM&Aを繰り返して財界に多少名が売れるようになり、ロックフォードの幹部の目に止まった。 何度か幹部と話していた時、ロックフォード家のパーティーに呼ばれた父は、その時初めてリリスを見て、その美しさに心を奪われた。 リリスは異性など一律な存在。 友人には一目置いていたが、それはあくまでも霊能者としての実力での視点からだった。 以前恋い焦がれていた異性がいたが、その彼は自分を救ってくれた一番大切な友人と結ばれる運命にあり、略奪愛も叶わぬ相手である故、綺麗に諦めた。 今では最も尊敬する男として彼を見ている。 リリスの父にしてみれば、父を懐に入れたのは先行投資としての意味合いが大きかったようだ。 事実、自ら立ち上げた小さな会社は、ロックフォードの看板の助けもあって、今や巨大企業の仲間入りを果たしている。 だが、父はそこまでの器。 以前、親しい友人にリリスが漏らした言葉がある。 もし彼が私の物になっていたのなら、もし彼がロックフォードを継いだのなら、ロックフォードは世界一のコングロマリットとして揺るぎない地位を築き上げていたか、彼が一瞬にして崩壊させていただろう。 私的にはどちらでも構わないが、今は想像でしか叶わない事だ。と。
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