あの時の二人

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「確か今日はお嬢様の誕生日だった筈…」 その誕生パーティーで自分は恥をかかされた。 秘書の髪を撫でる力が強まる。 気のせいか、香も先程よりも強まっている感じがした。 「奥様は目に入れても痛く無い程、お嬢様を大事になさっている…」 娘を連れ去り、主賓のいないパーティーの後始末をさせられた。 撫でている髪を握り締めてブチブチと秘書の髪を引きちぎる父… その苦痛を漏らさずに続ける秘書。 「もしもお嬢様が亡くなったら、奥様は大変嘆き悲しむ事でしょう。」 自ら命を絶つ事も有り得るかも知れない。 そうなったら… 「後は老い先短い先代のみ。つまりロックフォードは貴方の物…」 私の物… 香が空気に混じって渦を巻いている感覚を覚える。 「殺しちゃいましょう。」 殺す…か… 「お嬢様さえ殺してしまえば、後は貴方の思うが儘…」 娘を殺せば全て自分の物… 「殺しましょう。」 殺すか… 「殺しましょう。」 娘は8歳、簡単だ。 「殺しましょう。」 「そうだな…殺そう…」 虚ろな眼で空を見る父に対して、秘書の瞳はギラギラと輝いていた。
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