あの時の二人

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ここに居るのか…? ドックン!ドックン!と心臓の鼓動で聴覚がいっぱいになる父。 クローゼットに手を掛ける。 尋常じゃない汗を流し、それが目に入った。 それを袖で拭い去り、ハンマーを高々と掲げながらクローゼットを一気に開く!! 「だ、誰だお前!?」 振り上げた儘固まる父。 当然娘が隠れていると思っていた。 だが、居たのは東洋人の少女。 クークーと寝息を立てながら平和に寝ていた!! 膝がガクガク震え、自分を支えきれなくなり、その場に膝を付いた父… 「た、助かった…」 助かったとは一体? 何を私はホッとしているのだ? 娘じゃなくて良かったのか? 自問自答を繰り返して頭を押さえる。 「カーカー…ん~?」 目を擦りながら起きた少女。 「お、お前どうやって此処に入った…子供に破られるセキュリティーじゃない筈…」 漸く絞り出した質問。 少女は目をキョロッと父に向けて言った。 「私は北嶋。北嶋 静。リリムはおばちゃんのお部屋だよ。私はリリムのお友達でぇ~…」 そして途端に目を細めた。 「おじさんに殺人をさせない為、リリムに業を引き継がせない為に此処に来たの。」 娘の友達と言った少女は、恐らくは娘と同年代の筈なのに、それなりに修羅場を潜り抜けて来た父を遥かに凌駕する圧倒的自信とオーラを纏って立ち上がった。
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