あの時の二人

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「リ、リリス…?」 明らかに焦りの色が出る御父様に構わずに話す御母様。 リリス「君には感謝はしている。私にとってかけがえの無い存在を与えてくれたのだから。」 私の肩を強く抱く御母様。 私も御母様にしがみついた。 「き、『君』とは他人行儀な…」 真っ青になりながら愛想笑いをし出した。 リリス「秘書との情事も、その関係の不祥事も全て見逃してやる。リリムを与えてくれた、ささやかな礼だ。」 「ま、待ってくれ…確かに浮気はしたが…そんな事で…」 汗をダラダラ流す御父様、御母様の眼力によって動けずにいる。 リリス「君の会社も君に返そう。今後一切私達に関わらないでくれ。もしも関わろうとした場合、君の人生を生き地獄にしてやろう。私ならばそれができる。知っているな?」 御母様の圧倒的な威圧感に、黙ってコクンと頭を下げた御父様… 可哀想だし、同情もするが、秘書と浮気して意識を乗っ取られ、私を殺そうとしたんだ。 私よりも、娘よりも、家族よりも秘書との快楽を取った結末だから… 御母様はそれを許しはしない。 御父様は暫く動けずに固まっていたが、御母様に促されて漸く私の部屋から出て行った…
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