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急な山道を駆ける柏木の車。
街灯が徐々に無くなって行く。
それでもアクセルを踏む足を緩めなかった。
そしてとうとう街灯が全く無い
山の中腹部分にある、今は管理者しか来る事が無い施設に到着した。
柏木「おっと…こんな所に来るつもりは無かったんだけどな…」
人気の無い施設。
昔は見学等で多少の収益があったと云う、かつての鉱山跡地の見学場。
収益が見込めず、完全に閉鎖された建物はコンクリートがボロボロと零れ落ちながらも、今もその場に鎮座するように存在している。
金が無いから解体から逃れて、不気味に存在しているのだ。
柏木「確かここ、20年以上前に連続して変死した事件があったんだよなぁ…」
当時まだ産まれていなかった柏木だが、自分の親達の世代ではタブーと云われながらも語られている事件。
まだ観光地として機能していた時、観光客が何人も心臓麻痺で死んだ。
それも、バリケードで塞がっている横穴付近で。
ブルッと震える身体を抱き締めるように身を縮め、その異様な佇まいを、ただ見る柏木。
柏木「…此処に居ても仕方ない。」
柏木はバックミラーを見て、車を後退させ、向きを変えた。
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