ここは『出る』らしい

4/30

29174人が本棚に入れています
本棚に追加
/240ページ
廃墟にテールランプを向ける事ができた。 ブレーキを踏むと、赤い明かりが廃墟に反射する。 サッ 柏木「…今、今何か横切ったか?」 この鉱山跡地は、『出る』と有名な場所だった。 何も無いこの田舎町では、それなりに『遊べる』場所だ。 所謂心霊スポット巡りでだが。 柏木も先に運転免許を取得した友人に連れられて来た事もある。 その時は特に何も感じなかった。 心霊スポットと言っても、ただの廃墟だ。 期待していた分裏切られたような気持ちになったものだ。 その時は、勝手に期待して勝手に裏切られたと、随分身勝手だな、と笑いながら帰った。 柏木「今日は…期待しちゃっていいんじゃね?」 霊感が無い筈の自分が、幽霊を見る事ができる… 怖さと喜びが入り交じった、おかしな感覚を覚えながら、バックミラーを凝視する。 壁に反射した赤い明かりをじっと見る… まばたきも我慢して、暫く見る… 柏木「…ち、やっぱりなんもねーか。」 諦めてバックミラーから目を離し、正面を向いた。
/240ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29174人が本棚に入れています
本棚に追加