邂逅

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置かれた…いや、放置されて山積みとなっている本がパラパラと捲れる。 佐久間さんがビクッとしてそれを凝視する。 パラパラパラパラパラパラ… 捲れていく本。 やがてそれは治まる。 ホッとして捲れた本の上に更に別の本を放り投げて『見なかった事』にする佐久間さん。 成る程、山積みの本の理由はそう云う事か。 気分を落ちつかせようとしているのか、コンビニ袋からペットボトルの水を取り出して一口飲んでテーブルに置いた。 「…もう勘弁してくれよ……」 疲れたように顔を腕で覆いながら座り込んだ。 ペキッ…ペキッ… 覆った顔を瞬時に上げ、音の方向に首を回す。 と、テーブルの周りのゴミが誰かが歩いたように窪んだ。 それを目を見開いて凝視している。 歩いているんだ。 グチャッ 時折ゴキブリを踏み殺しながら、テーブルの周りを何周も歩いている。 ペキッ… やがて足音が止まる。 気配を感じているのか、佐久間さんは枕側のベッドの横から目を離していない。
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