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ライトが道を照らしていた。
よく、目を向けたらそこに…と話を聞くが、何も無い。
ここでも期待していた柏木ははぁ~っと息を吐いた。
今度こそ諦めて帰ろう。
アクセルペダルを踏む力を強める。
ゆっくり動き出す車。
バン!!
柏木「うをっ!?」
いきなり叩かれたような音を頭上から聞き、驚いた柏木は、アクセルペダルを思い切り踏み込んでしまった。
急発進する車。
柏木「うわっ!うわわわっ!!」
目の前の壁にぶつかる寸前でハンドルを回転させ、難を逃れた。
柏木「な、なんだよっ!?」
だが、まだ冷静になっていないのか、ただの運転の未熟からか、車はそのまま回転し、廃墟をライトで照らした。
柏木「あっ、あぶねぇ…」
漸くアクセルペダルから足を離せた柏木。ホッとして照らした廃墟を見る。
柏木「な!?」
安堵感が一気に消し飛んだ。
目の前、照らした壁に
痩せこけた男が薄ら笑いを浮かべながら自分を見ていたからだ。
柏木は
心臓の音が今までにない程高まり
発熱の震えを遥かに凌駕する振動を全身に感じ
雨に打たれたように一瞬でずぶ濡れる程の汗を流した。
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